bitter sweet



「あれ、どっかに捨てちゃっていい?」
マルスの胸の上に乗っかったままで、悪戯っぽくロイが尋ねる。
「あれって?」
ロイの視線の先を、マルスが追う。
その視線の先には、ベッドの横のサイドテーブルの上に、
そっけなく置かれた窓からの月の光に照らされて銀色に光る、男性用の指輪があった。
「あれ、捨てちゃダメ?」
マルスの手に、自分の指を絡めたり、解いたり。
何時に無く、子供みたいに。
「朝になったら、またあれを嵌めて、マルスは別の人のものになっちゃう。 別の人の隣に帰っちゃう。」
我侭を言う、子供のみたいに。
「嫌だよ、そんなの。」
自分のほうを向いた、マルスと目を合わせて。
「捨てさせて。あの指輪。」



わかってるんだ。そんな事したって、あなたには他の人が居る。
その事は、なくならない。
でも



嫌なんだ。あれを見る度、
あなたは、僕のものじゃないという証を見せ付けられるみたいで。



「………ごめん。」
長い沈黙の後、謝ったのは、ロイの方。
「我侭言って………ごめん」
何て自分は子供なのだろう。
彼の隣に居たいのに、彼と並んで居たいのに、
あまりにも自分が子供すぎて、悲しくなる。
「………捨てられたら、良いのにね。」
突然のマルスの言葉に、ロイが驚いて顔を上げる。
「マルス。何、言って………」
「色んなものが有って指輪を捨てる事は、無理だけど。
あの指輪に、僕の場所は縛られているけど………」
ロイを見つめる、その真剣な瞳が、マルスの言葉に嘘の無いことを告げている。
「君が隣にいる時は、僕は君だけのものだから。」
その言葉を聞いた瞬間、ロイは泣きそうな顔で、笑顔を見せた。



僕らの関係はきっと、誰かにばれたら引き離されてしまう。
僕らの関係はきっと、間違っている。
それでも今は
あなたの隣に居られる時間だけは
もう少しこのままで



すでに皺くちゃになったシーツの上で、再び二人は身体と、心を重ねる。
次の朝にはまた、二人は別々の世界に戻ることになるから、時間が惜しいというように。



この苦くて甘い関係が、少しでも続くようにという想いを、二人で抱きながら。


End


言い訳
何時にも増して文章が、文法がおかしいです。
切ない系だとどうして文がおかしくなるのだろう(知るか)。
今までの設定とはちょっと違う「普段は別々の世界で生活しているけど大乱闘のある
期間だけスマデラ界で会う」という不倫にもってこい設定(謎)採用です。
二人の関係の切ない感じを出したかったのですが、
あんまり出ていないです・・・・・・・・・